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11月2日 上杉春雄デビュー25周年記念コンサート~時を聴く

11月2日<「上杉春雄2013 デビュー25周年記念コンサートシリーズ~時を聴く~>(兵庫県立芸術文化センター)へご来場の皆様、ありがとうございました!

写真 (79).jpg

当オフィスの公演としては、久しぶりのピアノソロによるコンサートでした。

公演概要
Facebookページ

「ぶらあぼ」2013年10月号"ぷれすてーじ"上杉春雄インタビュー

Web「ぶらあぼ」~上杉春雄と高坂はる香の25の音楽夜話


「現役の医師であり、プロのピアニスト」としてテレビやラジオ、新聞等でたびたび取り上げられる上杉春雄が、デビュー25周年を機に全国で4回のコンサートを1か月の短い間に集中して行った、その最終公演が、この兵庫県立芸術文化センターでの公演です。


バッハ、クセナキス、ベートーヴェン、ストラヴィンスキー、ショパンと名曲、大曲ぞろいのプログラムを「時を聴く」と名づけた上杉春雄の演奏の様子は、後日、音楽誌での批評にも取り上げられるそうです。
掲載時期、誌名がわかりましたら、お知らせいたします。

~アンコール曲~
◯ショパン/夜想曲 第20番嬰ハ短調(遺作)
◯バルバストル(Claude-Benigne Balbastre (1727-1799))/手回しオルガンのためのロマンス


ここでは、今回の公演開催までと、その後のエピソードをご報告いたします。

〇ホール予約
皆さんは、コンサート会場の予約が、いつから始まるかご存知でしょうか?
会場により違いはありますが、大体1年前からです。
つまり、多くのコンサートは、1年以上前から計画が始まります。
(もっとも、海外のオペラやオーケストラ、バレエ等、規模の大きな公演は、それよりずっと前からスケジュールが組まれます)


今回の会場、兵庫県立芸術文化センターの会場予約は、1年前から。
昨年の11月1日に予約しました。
「予約」というより「抽選」です!
人気の高い会場では、希望の日にホールを確保できるか否かが、コンサート開催の第一関門でもあります。

ここで
「ホールの予約は、誰が行くの?」
と思われた方もいらっしゃるでしょうか。

演奏家ご本人が予約される場合もありますが、上杉春雄は札幌在住のため、当オフィスから選手出陣、みごと第一希望を引き当て、スタートを切りました。

(ちなみに、来年2014年の上杉春雄リサイタルも、昨年を上回る激戦の中、第一希望を引き当てました。クジの札は左手で引くことにしています/1号)


〇ヘルマ
今回のプログラムで、コンサートでは滅多に聴くことが出来ない曲として、「この曲を聴くために来た」と仰る方もあったのが、ギリシアの作曲家・クセナキスの「ヘルマ(Herma)」という作品です(作曲年代は1960-61年)。

配布プログラムに寄せた上杉自身による曲目解説によると、

『"ヘルマ"とは、形作られること、胎、芽生え、というような意味のギリシア語(中略)古代ギリシア哲学者たちの問いかけ「自分とは何か」「宇宙とは何か」ということに対する答えを、時に静かに沈思黙考し、時には激しく戦いながら探し求めているような音楽だと思います』
(む、ムズカシイ、、、)


当日、開演に先立ち
「こうして演奏前に話をすることは、良し悪しなのですが」
と言いながらマイクを持った上杉は、この「ヘルマ」について
「プログラムにいろいろなことを書きましたが、あまり難しく考えずに聴いてほしい」
として、最初のバッハを弾き始めました。

この日の会場には、上杉のNHK「ラジオ深夜便」出演をお聴きになってこられた方も多く、ラジオでの穏やかな上杉の話しぶりから「癒しの音楽」を想像してこられたお客様には、この「ヘルマ」は、かなりの衝撃、ギャップをもって受け止められるかもしれないという懸念もありました。

「ヘルマ」には、メロディがありません。わかりやすく美しい和音進行もありません。
激しく跳躍する音と音は、まるで火の玉のようで、それらが猛スピードでひたすらぶつかりあっている、そんな印象の作品です。


―はたして

ご来場の方の、ほぼ半数という大変高い回収率(ありがとうございました!)のアンケートを拝見したところ、この「ヘルマ」へ熱烈なコメントを続々と頂いていました。
「内なるエネルギーをかきたてられた」「脳が歓び遺伝子が踊るのを感じた!」等々です。
おそらく、ごく少数の「ヘルマが目当て」の方以外は、この曲を初めて聴かれた方ばかりのはずですが、プレトークを行ったことにより「難しい」とかたくならずにお聴き頂けたこと、もう一つは、バッハに続いて「ヘルマ」を演奏し、その後に、ベートーヴェンが最晩年に書いた、どこまでも透明で深い海のようなピアノ・ソナタ第31番(作品110)を演奏した曲の並びの効果も大きかったように思われます。

ソロリサイタルのプログラムを考えることは、演奏家にとって、おそらく最も大きな楽しみの一つですが、今回の「時を聴く」は、その点で上杉の熟考による構成の妙が鮮やかでした。


〇雑記
たとえば当オフィスのように、音楽を仕事にしていると「音楽が身近にあるのが当たり前」「コンサートへ行くことは日常的」という風に、感覚が「麻痺」してきてしまいます。
これはとても危険なことだと、最近とみに感じています。

今回も
「ラジオ深夜便でこのコンサートを知り、初めて本格的なピアノのソロを聴きました」
という方がいらっしゃいました。
日頃、いろいろな方法でコンサートのお知らせを多くの方へお届けしようと努力していますが、その方法は、どうしても、音楽好きの方、コンサート通いが習慣になっている方に宛てたものに偏りがちです。

―これまでに一度もコンサートホールへ足を運んだことが無い方に来て頂くには?

演奏家や作品と、それを聴いてくださる皆さんをつなぐ役割の我々には、まだまだやることが沢山あります。


〇来年度公演予定

上杉春雄は、来年も関西でリサイタルを行います。
ご来場の方にはいち早くお知らせしたその日程は

2014年11月1日(土)14時開演(予定)
兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院 小ホール

「来年も聴きたい!」という方も、今年の公演を聴き逃された方も、
ぜひ!今からご予定にいれてくだされば幸いです。


☆レポート文責:1号

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投稿日:2013年11月10日 (日) 20:36

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